BEFORE・ラディカル・オーラル・ヒストリー 保苅実著作集BOOK2 アンチ・マイノリティ・ヒストリー

BEFORE・ラディカル・オーラル・ヒストリー

保苅実著作集BOOK2 アンチ・マイノリティ・ヒストリー

保苅実 著

体裁:A5判・並製・カバー・480頁
価格:本体3,400円+税
刊行:2024年6月下旬
ISBN978-4-911029-06-0 C1020

読者をいまなお駆り立てる『ラディカル・オーラル・ヒストリー』は、どのように書かれたのか。その軌跡が明らかになる。

『ラディカル・オーラル・ヒストリー』によって後世の歴史研究に大きな影響を与えることになった歴史学者・保苅実。いまなお後進に多大なインスピレーションを与え続ける著者の未単行本化エッセイ、論文を集成。BOOK2には、「現代思想」に掲載された「アンチ・マイノリティ・ヒストリー」ほか、学術誌などに掲載された論文と、海外で発表した英語論文を掲載。

アンチ・マイノリティ・ヒストリーは、地方性に焦点をあて、複数文化の接合を研究し、ネットワークの網目に注意を向ける。ローカルかつグローバルな接合のネットワークに焦点をあてるこの企ては、様々なマイノリティたちを〈主流〉や〈中心〉といった基準なしに歴史記述のなかに登場させる。植民地近代が生み出した「マジョリティ/マイノリティ」という二項概念から〈歴史の語り〉を解き放つ地平が、こうしてはじめて立ち現われてくるのである。(「アンチ・マイノリティ・ヒストリー」より)

【目次】

[日本語論文]
アボリジニ部族経済と牧場労働――先住民族の経済史(修士論文)
アボリジニ部族経済と牧場労働――グリンジ族土地所有権運動の歴史的背景
アボリジニが語った白人の起源『ジャッキー・バンダマラ』――グリンジの歴史実践にみるリアリティー
アンチ・マイノリティ・ヒストリー――ローカルかつグローバルな歴史に向けて
オーストラリア先住民とジャパニーズ――開かれた「和解」に向けて
歴史の限界と多文化主義――『歴史』をめぐるアボリジニとの対話
オーストラリア先住民の牧場退去運動――オーラル・ヒストリーからの接近
カントリーの生命を維持するために――牧場開発とアボリジニ
歴史の再魔術化

[英語論文]
Spatial Dimension of Aboriginal History: The Interpretation of Colonial Landscape by an Aboriginal Historian
From Wattie Creek to Wattie Creek: An Oral Historical Approach to the Gurindji Walk-off
Reading Oral Histories from the Pastoral Frontier: A Critical Revision
Images of Australian Colonialism: Interpretation of Colonial Landscape by an Aboriginal Historian
Globalising Aboriginal Reconciliation: Indigenous Australians and Asian (Japanese) Migrants.
Anti-Minorities History: Perspectives on Aboriginal-Asian Relations
The Re-enchantment of History
Maintaining History: The Gurindji People’s “Truthful Histories”
Localised History: ‘Dangerous’ Histories from the Gurindji Country
History Happening in/between Body and Place: Journey to the Aboriginal Way of Historical Practice
On Gurindji Mode of Historical Practice

解説エッセイ 野上元
       月光に身をひたして 保苅由紀

【著者プロフィール】

保苅実(ほかり・みのる)
1971年、新潟市に生まれる。1996年、一橋大学大学院経済学研究科・経済学修士取得。1996年より、ニューサウスウェールズ大学在籍。歴史学Ph.D専攻。1999年よりオーストラリア国立大学に在籍、2001年にオーストラリア国立大学歴史学博士号取得。1999年から2003年まで、オーストラリア国立大学太平洋・アジア研究所(人類学科、歴史学科)、人文学研究所に客員研究員として、2002年からは日本学術振興会特別研究員として慶應義塾大学に所属。
2003年7月、フィールドワークに向かう途中にて発病(悪性リンパ腫)。2004年5月、豪・メルボルンにて永眠。同年7月、オーストラリア国立大学にて豪州の先住民族研究者対象の保苅実記念奨学金が設立された。著書に、『ラディカル・オーラル・ヒストリー オーストラリア先住民アボリジニの歴史実践』(お茶の水書房、2004年、岩波現代文庫、2018年)、『GURINDJI JOURNEY』(University of New South Wales Press、2011)がある。

写真提供:保苅実とつながる会/読売新聞社撮影

【編集協力】
保苅実とつながる会 / Being Connected with HOKARI MINORU

保苅実が投じた一枚の花弁が引き起こす爆発の行方を見守り、彼が最期の瞬間まで求めた人々とのつながりを大切にし、新しいつながりを創りつづけることを活動目的とする。著作権肖像権の管理をはじめとし、オーストラリア国立大学・保苅実記念奨学基金の窓口、保苅実写真展の開催の他、年に二回(7月と年末年始)のニュースレター発行などを活動内容とする。

https://sites.google.com/view/hokariminoru

note.com/hokarimioru
X.com/hokari_minoru

【ジャンル】人文書/歴史学・文化人類学・社会学・哲学・思想