乱歩ラビリンス 池袋から人外境まで

乱歩ラビリンス

池袋から人外境まで

立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター 

体裁:B5判・並製・カバー装・128頁
価格:本体2,400円+税
刊行:2025年9月
ISBN978-4-911029-21-3 C0091

合理性と神秘性、現実と幻想、知性と夢想など、
矛盾した要素が錯綜した江戸川乱歩の魅力を伝える――

1894年、三重県に生まれた平井太郎=江戸川乱歩。誕生から、作家になるまでの苦節の時代、作家としてのデビュー、そして大家へとなり文壇の中心人物となっていったその生涯を、200枚を超える写真や残された資料と併せて紹介。初めて本に掲載される乱歩自身が撮影した映像のスクリーンショットもカラーで掲載する。
生涯で46回の引越しを繰り返した乱歩が終の棲家として選んだ場所が池袋だった。池袋での生活や交友関係からは、生活者としての乱歩=平井太郎の姿が見えてくる。

本書は、旧江戸川乱歩邸のリニューアルを契機として、大衆文化研究センターで所蔵する多様な資料を広く知っていただく目的で企画したものである。「ラビリンス」(迷宮)は、合理性と神秘性、現実と幻想、高度な知性と子どもじみた夢想など、互いに矛盾する要素が複雑に錯綜した乱歩の世界を表現している。サブタイトルの「池袋」は家族や友人そして地域社会との結びつきの中にあった生活者としての平井太郎(乱歩の本名)を現実世界に結びつける記号であり、「人外境」は人間社会の倫理、道徳や規範の及ばない暗黒の世界であると同時に、一種のアンチ・ユートピアとして、社会常識の軛くびきから逃れた絶対的自由の実現する理想の天地という両義を担う乱歩の創作の中の用語であり、乱歩の創造=想像の世界を象徴している。大衆文化研究センターの所蔵する多様な資料から、社会的存在としての平井太郎と探偵作家としての江戸川乱歩のあいだにある、時には矛盾を内包した、複雑で錯綜した存在としての人間・江戸川乱歩の痕跡を読み取っていただければ幸いである。(本書「ごあいさつ」より)

【目次】

 はじめに
 わが家の住まいと暮らし 平井憲太郎

Ⅰ池袋まで 前半生の彷徨 川崎賢子
 池袋のまちと乱歩邸 石榑督和

Ⅱ乱歩の転居(昭和九年) 宮川健郎
 池袋二十四年[再録] 江戸川乱歩

Ⅲ乱歩と池袋の交遊圏 後藤隆基
 江戸川乱歩とぼく 戸川安宣

Ⅳ趣味的生活の乱歩 金子明雄
 江戸川乱歩旧蔵江戸時代関係蔵書について[再録] 渡辺憲司

Ⅴ乱歩と太郎 石川 巧
 旧江戸川乱歩邸改修工事・収蔵庫新築工事報告 安部紀芳

【編者略歴】
立教大学江戸川乱歩記念大衆文化研究センター
2006年、江戸川乱歩の旧蔵書や資料を核とし、日本内外の大衆文化研究の拠点となるべく、設立された研究機関。乱歩関連資料の整理・保存、建造物を含む乱歩関連資料の公開を中心として、研究雑誌『大衆文化』『センター通信』の発行、乱歩邸における展示、公開講演会などのプログラムによって、幅広い大衆文化研究の成果の公開および社会還元を行っている。

【ジャンル】文芸書/日本文学、評論、図録