出版社、はじめました。
一度転職を挟みながら、かれこれ15年ほど、出版社の社員として仕事をしてきた。学生時代、書店でアルバイトをしていたこともカウントすれば、20年近く、本に関わる仕事をしてきたことになる。これまでの人生の半分を、そうやって生きてきたと考えると、我ながらよくやっているなと思わなくもない。本が好きじゃなければ、本によって人生や考え方を変えられていなかったら、ここまで続かなかったとも思う。
会社員として出版に関わる中で、業界全体が抱えるさまざまな行き詰まりは目にしてきたし、自分自身、年々、仕事のしにくさを感じるようになってきていた。なんというか、ぎくしゃくすることが多くなってきていた。
自分がやりたいことはとてもシンプルで、良いと思ったものを本という形にして送り出すこと。それが利益を上げて、関わる人間たちが食っていくことができれば良い。そのシンプルなことが、会社員として働いているとなかなかできなくなる、できにくくなる、もしくはとかく手間がかかる、という数年だった。
だったら、会社に頼らずに、自分でそのシンプルな思いを実践すればいいじゃないか。
これが、ひとりで出版社を立ち上げた素直な動機だった。
出版というものが産業となり、とかく複雑で強固なシステムが作り上げられた。でも、いまそのシステムと現実の齟齬が大きくなっている。出版バブルなんて業界に関わったときにはすでにはじけていたのに、いまだにその夢から覚めていないところもある。そんなこと、知らないよ。
パンクと呼ばれる音楽のスローガンに、DIY=Do It Yourselfという言葉がある。近年何度目かわからないブームの日曜大工を指す言葉であるとともに、「自分でやれ」というスローガンだ。そうやって70年代に大量のバンドが生まれて、7incシングル数枚で消えていった。でもレコードという形で残したから、いまや何をやっているのかもわからない人間が作った音楽を、いまでも聞くことができる(いまWikiで調べたら、DIYはそもそも「イギリスの首都ロンドンで、破壊された街を自分たちの手で復興させる国民運動」のスローガンだったらしい。DIY史、気になるぞ)。レヴィ=ストロースも 『野生の思考』でブリコラージュと言っているじゃないか。周りを見渡せば、自分で出版社や書店を始めた友人・知人もいる。じゃあ、やってみるしかないじゃないか。そんな思いが、年々強くなっていったのだ。
だから、出版社を、はじめました。
もろもろの手続きを2022年12月に終え、いまこうやって何とかHPも立ち上げた。2月に最初の本を刊行する準備も進んでいる。まだまだ準備中だけれども、図書出版みぎわ、スタートします!