三島中洲入門

二松学舎大学ブックレット No.1

三島中洲入門

江藤茂博・町泉寿郎 編著

体裁:A5判・並製・112頁
価格:本体1,500円+税
刊行:2024年4月刊行予定
ISBN978-4-911029-08-4 C0391

二松学舎大学ブックレット創刊!
夏目漱石も通った「漢学塾二松学舎」の創設者であり、幕末~近代の漢学・東洋学の発展に尽力した三島中洲。彼が書き残した『中洲講話』の主要な文章を、読みやすい現代語訳で掲載。渋沢栄一、平塚らいてうといった関係人物たちの証言、中洲関係年譜も併録し、三島中洲のひととなり、後世への影響を伝える。

この小誌を「三島中洲入門」として、案内したのは、彼の代表的な著作である「中洲講
話」(一九〇九年一一月刊行、文華堂書店)の中から、第一部として、三編を選び、二松学舎開塾に当たって漢学の意義を記した文章を併せて、日本漢学の研究者である町泉寿郎文学部教授に現代語訳していただいた。現代の読者が手にしても親しみやすいようにしていただいたのである。そして、第二部として、主として「二松学舎大学新聞」に掲載された文章から選び、再録した。さらに、渋沢栄一「論語と算盤」で、三島中洲が登場している箇所を収録した。もちろん、小誌は、特に三島中洲の思想の解説をあてて入門としたわけではない。三島中洲がどんなことを考え、またどのような人たちと交流していたのかを、本人の文章や彼にまつわる文章からわずかでも知ってもらいたいと思い、編集したものである。
さらに、小誌のためにまとめた三島中洲の年譜で、彼の足跡をたどりながら、ここに採録した文章を重ね合わせて欲しいのである。(本書「あとがき」より)

【目次】

第一部 「中洲講話」を読む[現代語訳 町泉寿郎]
 義利合一論
 崇神論
 余の学歴
 漢学大意

第二部 三島中洲を知る
 岡山なまりの温和な人柄 岸 哲男
 煙草を好み詩作にふける 岸 哲男
 論語と算盤は甚だ遠くして甚だ近いもの(『論語と算盤』より) 渋沢栄一
 らいてう先生と二松学舎 らいてう先生に質問する 平塚らいてう(談)
 よき師友に恵まれ学識深まる 石川梅次郎
 出仕を勧める師、方谷の書翰 山田 琢
 異才、河井継之助との出合い 中田 勝
 異才、河井継之助が舌を巻く 中田 勝
 吉田松陰との出合い 橋本栄治
 中洲とボアソナード 貴重文献の発見まで 川久保広衛
 論語と私 植村 環
 三島中洲年譜での生年考 便宜的な西暦換算から生じたことなど 江藤茂博

附 録
 幕末維新期の人的交流
 ――近代日本経済の父・渋沢栄一と近代日本を生きた漢学者・三島中洲 江藤茂博
 三島中洲関係年譜 町泉寿郎
 あとがき 江藤茂博

※三島中洲(みしま・ちゅうしゅう)とは――

名は毅[き]、字は遠叔。天保元年、備中窪屋郡中島村(後の中洲町、現在の岡山県倉敷市中島)に生まれた。11歳から学問を志し、14歳で儒学者山田方谷の門に入り陽明学を学んだ。さらに斎藤拙堂のもとで見識を深め昌平黌において佐藤一斎に学んだ。30歳の時、備中松山藩に仕え、幕府老中でもあった藩主板倉勝靜とともに激動の幕末を経験した。明治維新後、新政府の命により上京、新治裁判所長、大審院判事(現在の最高裁判所判事)を務めた。明治10年、官を辞し「漢学塾二松学舎」を創設。多くの子弟を育成し、漢学・東洋学の発展に尽力した。のちに東京高等師範学校教授・東京帝国大学文科教授・東宮御用掛・宮中顧問官を歴任した。

【編著者略歴】
江藤茂博 (えとう・しげひろ)
立教大学大学院文学研究科博士課程満期退学、博士(文学)/二松学舎大学。現在、二松学舎大学文学部教授。最近の業績に、「染付文様に見る職人往来の様相」(『東方美術第二号』東方学術研究センター編、言視舎、2023年)、『読む流儀―小説・映画・アニメーション』(言視舎、2020年)、『講座 近代日本と漢学 第二巻 漢学と漢学塾』共編(戎光祥出版、2020年)、『講座 近代日本と漢学 第八巻 漢学と東アジア』(編、戎光祥出版、2020年)などがある。

町泉寿郎 (まち・せんじゅろう)
二松学舎大学大学院文学研究科博士課程修了、博士(文学)。 現在、二松学舎大学文学部教授。最近の業績に、『日本近世医学史論考』Ⅰ・Ⅱ(武田科学振興財団杏雨書屋、2022年)、編著に『レオン・ド・ロニーと19世紀欧州東洋学』(日本漢学研究叢刊1、汲古書院、2021年)、『渋沢栄一は漢学とどう関わったか―「論語と算盤」が出会う東アジアの近代』(渋沢栄一と「フィランソロピー」1、ミネルヴァ書房、2017年)などがある。