博物館のアルケオロジー
落伍・追放・従属・未発・植民地
犬塚康博 著
体裁:A5判・並製・カバー装・400頁
価格:本体3,200円+税
刊行:2024年12月
ISBN978-4-911029-13-8 C1000
これからの博物館は、どのような轍を踏まずに変わるべきなのか──
明治期わが国に博物館が誕生してからこんにちに至るまで、日本の博物館学が見落としてきた様々な問題に関する論考群を、落伍、追放・従属、未発、植民地というカテゴリーで編む。国内中央のみならず地域、さらにアメリカの日系人収容所、植民地であった満洲国と、時代、場所、学問の領野を縦横断して、博物館体験を考古学する。
本書は、筆者の博物館史研究に関する三冊目の著作集である。二〇〇九年以降に書いたものを基本にして、収録した。以下は、若干の次第である。
筆者は考古学を専攻したが、就職先の考古学は発掘調査をしなかった。掘らない考古学を告げて書いたのが、『戸山屋敷銅鐸考』(尾張地域の考古資料に関する文献資料調査⑴、名古屋市博物館、一九九一年)である。本書でも掘っていないが、考古学の拠って立つ層位学と形態学がそれぞれ意味するところの〈時間〉と〈構造〉を念頭に置き、博物館の現象を考えたというほどのアルケオロジーであればと念う。(本書「あとがき」より)
【目次】
〈学芸員〉は〈キュレーター〉ではなかった!!
Ⅰ 落伍
反商品の教育主義――博物館の自意識に関する考察
商品陳列所改造論
博物館外部システム論
博物館史から見る橋下府政の博物館論
Ⅱ 追放・従属
一九四〇年代前半東京科学博物館の団体研究と「開放された大学」
木場一夫『新しい博物館――その機能と教育活動――』の研究
井尻正二の「大学的研究と博物館的研究」をめぐる博物館研究の史的検討
収容所の博物館、占領期の博物館(博物館と主権に関するノート)
Ⅲ 未発
『興業意見』の陳列所・博物館論
未発の資料館――名古屋市守山区吉根の区画整理と博物館体験――
吉田富夫の遺跡公園論と博物館論
Ⅳ 植民地
新京動植物園考
ゴジラ起源考
略奪文物返還問題備忘録
補遺 博物館法二〇二二年改定の意味
あとがき
初出一覧
索引
【著者略歴】
犬塚康博(いぬづか・やすひろ)
1956年生。関西大学文学部史学科卒業。千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程修了。博士(文学)。考古学、博物館史研究。主な著作に、『戸山屋敷銅鐸考』(名古屋市博物館、1992年)、『反博物館論序説――二〇世紀日本の博物館精神史』(共同文化社、2015年)、『藤山一雄の博物館芸術――満洲国国立中央博物館副館長の夢』(共同文化社、2016年)などがある。
【ジャンル】人文書/歴史・地理・図書館・博物館