
【新装版】ここから始める文学研究
作品を読み解くために
荒井裕樹、五井信、瀧田浩、中谷いずみ、山口直孝 編著
体裁:A5判・並製・カバー装・192頁
価格:本体2,200円+税
刊行:2025年4月
ISBN978-4-911029-18-3 C0095
文学研究って、何するの?
感想文を論文にするためには、どんな思考が必要なのか。
作品成立の背景や時代状況を知り、方法や理論を学ぶと、小説を読むことがもっと楽しくなる。
夏目漱石や泉鏡花といった文豪たちの小説を読みながら学べる、最初の文学研究入門書。
※本書は、『ここから始める文学研究――作品を読み解くために』(みずき書林、2022年)に修正を加え、装丁を新しくした新装版です。
なぜ大学で、日本近現代文学の読み方を学ぶのか――。
英語や中国語といった外国語や古典を読むというならともかく、読もうと思えば誰でも読める日本の近現代文学を学ぶ/教える理由について、ときに尋ねられ、ときに回答に頭を悩ませることがあります。身も蓋もないことをいえば、それは「好きだから」であり「面白いから」ということになるのでしょう。面白い小説に没頭して時間の経過を忘れるというのは、とても幸福な経験だと私も思います。でも最初の問いに戻るなら、それでは十分な回答という気がしない。いやむしろ、自分たちの授業の受講生すべてが近現代文学を
「好き」で「面白い」と思っているなんて、この本の執筆者は(おそらく)誰も思っていません。……ではなぜでしょう?
少し恥ずかしい気持ちをおさえて大風呂敷を広げるなら、その理由は「思考力を鍛えるため」です。この回答なら、この本の執筆者全員が(これまたおそらく)「それは違う」とはいわないと思います。そう、大学の授業としての日本近現代文学を担当する私たちは、受講する学生諸君たちの思考力を鍛えたいと思っている。(本書「はじめに」より)
【目次】
Ⅰ 基礎知識
大学で小説を読むこと――創造行為としての小説読解/五井信
本文は、絶えず変わってゆく――草稿、原稿、雑誌、単行本/山口直孝
作り手のことを知る意味――作家と作品との関係/山口直孝
同時代――作品発表の時代まで遡って調べよう/瀧田浩
研究のルールとマナー――引用と剽窃・資料保存・プライバシー/荒井裕樹
Ⅱ 文学理論
語り① 文学研究の前提
語り② 〈叙法〉と〈態〉について
身体 身体を読む、身体から読む
境界・中心・周縁 世界の境目を読む
読者論 読み手として自立することから
都市論 有機体として考える
マルクス主義文芸批評 階級差を意識する
精神分析批評 抑圧された欲望と無意識
エディプス・コンプレックス ギリシャ悲劇の父殺し
フェミニズム・ジェンダー批評 性と欲望
ポストコロニアル批評 私はどこにいるのか
アダプテーション ジャンルの横断から見えること
Ⅲ 作 品
外科室/泉鏡花(解説:山口直孝)
少女病/田山花袋(解説:五井信)
夢十夜(「第一夜」、「第三夜」)/夏目漱石(解説:五井信)
小僧の神様/志賀直哉(解説:瀧田浩)
施療室にて/平林たい子(解説:中谷いずみ)
疎林への道/小島信夫(解説:山口直孝)
水滴/目取真俊(解説:中谷いずみ)
誕生日の一日/津村記久子(解説:荒井裕樹)
Ⅳ、巻末資料
日本近代文学をさらに深く研究するために 施設とツール
【編者略歴】
荒井祐樹(あらい・ゆうき)
二松学舎大学文学部教授。日本近現代文学・障害者文化論(マイノリティの自己表現活動)。著書『障害者差別を問いなおす』(筑摩書房、2020年)、『まとまらない言葉を生きる』(柏書房、2021年)などがある。2022年「第15回 池田晶子記念 わたくし、つまりNobody賞」受賞。
五井信(ごい・まこと)
二松学舎大学文学部教授、日本近代文学(文学理論、カルチュラル・スタディーズ、映画)、著書に『田山花袋――他人と文学』(勉誠出版、2008年11月)、『理論で読むメディア文化』(共著、新曜社、2016年5月)、論文に「女子教育のなかの文学――日露戦争前夜の『女学世界』」(『国語と国文学』、2017年5月)など。
瀧田浩(たきた・ひろし)
二松学舎大学文学部教授、日本近代文学と文化研究(『白樺』派文学と高度経済成長期の文化研究が中心的な研究領域)、著書に『武者小路実篤文学の構造と同時代状況』(文学通信、2024年2月)、文化研究の論文に「六〇年代詩と七〇年前後のポップスの状況――渡辺武信と松本隆を中心に」(『敍説』2013年3月)など。
中谷いずみ(なかや・いずみ)
二松学舎大学文学部教授、日本近代文学・文化(フェミニズム・ジェンダー、戦争と表象文化、文化運動)、著書に『その「民衆」とは誰なのか――ジェンダー・階級・アイデンティティ』(青弓社、2013年7月)、編著に『女性と闘争――雑誌『女人芸術』と一九三〇年前後の文化生産』(青弓社、2019年5月)、論文に「歴史の所在/動員されるホモエロティシズム――大江健三郎「われらの時代」にみる戦争の痕跡」(坪井秀人編『戦後日本を読みかえる3 高度経済成長の時代』臨川書店、2019年3月)など。
山口直孝(やまぐち・ただよし)
二松学舎大学文学部教授、日本近代文学(私小説、探偵小説、現代文学芸術運動)、著書に『「私」を語る小説の誕生――近松秋江・志賀直哉の出発期』(翰林書房、2011年3月)、『大西巨人論――マルクス主義と芸術至上主義』(幻戯書房、2024年3月)、編著に『横溝正史研究』(戎光祥出版、既刊6冊、2009年4月~2017年3月)など。
【ジャンル】文芸書/日本近現代文学・文学研究