【汀日乗】みぎわ丸書店、はじめました

自社の本を売りたい、これまで作った本、関わった本を売りたい。会社を立ち上げる前から、そう考えていた。なので、オンライン書店「みぎわ丸書店」を立ち上げてみました。

みぎわ丸書店

出版社に所属していると、作るのは編集者、売るのは営業部、というように役割分担がされる。編集者としてSNSなどをつかって情報拡散はするけれど、実際に編集した本のチラシを持って営業周りをしたことは少なかった。編集仕事に追われると、情報拡散をする時間すら確保できなかったり。それはずっとジレンマだった。

最初に勤めた会社では、編集も営業どちらも経験できた。そこで多少なりとも、営業部の大変さを思い知った。だから営業の立場もわかるのだけれど、どうしても、もっとこういう風に案内してほしい、みたいなことを感じてしまうこともあった。

でもそれは当然なのだ。担当した本のことは、著者と担当編集者が一番よく知っている。どの書店が興味をもってくれそうなのかとか、どんな本と一緒に並べてほしいのかとかも。それをしっかり営業担当に伝えられないことが良くないのだけれど、営業は営業で扱う本も多いし、一冊一冊を丁寧に案内する、ということは、実際問題として難しい。

だけどいま、ひとりで出版社を始めた以上は、良くも悪くも、自分でどちらもやらなくちゃならない。大変だけど、それがちょっと、楽しかったりもする。作った本をどうやって読者の元に届けるのか、書店さんにどうやって営業をするのか、そしてどうやって本を売るのかを、いろいろ模索していきたい。

基本的には、書店で手に取ってもらい、中を見た上で買ってもらう、というのが一番いいと思っている。僕自身がその流れで本を買うことが一番多いし、何よりも書店という場所、空間が好きだ。

でもいま、本を買う方法はそれだけではなくなっているし、僕自身、書店に置いていない本をamazonで買うことも多い。一冊でも多くの本を売るために、購入できる選択肢は多い方がいいはず。

ゆくゆくは、関わった本だけでなく、個人的に販売したい本を仕入れて売りたい。なんなら、本屋をやりたい。出版社を立ち上げてまだ1ヵ月ちょっとなので、すぐにリアル書店を始めることは難しいのだけど、ゆくゆくは、と思っています(野望はたくさんあった方がきっと良い)。

その手始めに、直接本が販売できるよう、「みぎわ丸書店」を立ち上げました。

今月末完成の『世界を文学でどう描けるか』と、古巣の勉誠出版から刊行された『谷崎潤一郎の世界史』をひとまず販売開始しています。順次、関わった本なども増やしていきます。なので、覗いていただけたら嬉しいですし、ポチっと、ご購入いただけましたらなお嬉しいです。よろしくお願いいたします。


そういえば、大学時代にアルバイトをしていた書店で、一度だけ、文庫のフェアをやらせてもらったことがある。「堀文庫」とか名付けて、文庫30冊ぐらい選んで、10冊ぐらいを紹介したリーフレットも自作した。漱石の『文鳥・夢十夜』とか、あとは安部公房、カフカとか並べたのかな…… あの時配布したリーフレット、自分で何を書いたのかも覚えていないし、もう手元に残っていない。けど、目の前でその本を手に取ってくれて、そのまま購入してもらえた時の嬉しさは覚えている。

そこから20年経って、いま、ある書店のフェアで配布するためのリーフレットを、楽しみながら作っている。

選書するとか、本の紹介文を書くとか、自分が関わっていなくても、そういうことをするのが好きなのだなと自覚する。いつか自分の書店で、フェアとかもやれたら嬉しい(野望はたくさんあった方がきっと良い)。


今日の一曲は、「ワン、トゥー、ワン、トゥー、ベースメン」という軽やかなカウントから始まる、ジョナサン・リッチマンの「Rockin’ Shopping Centre」。「Roadrunner」も好きだけど、これは聴くだけなんだかワクワクしてくる。お店の中をスノーマンが徘徊する「Abominable Snowman in the Market」も良い。

この曲みたいなワクワクする本の空間を、まずはweb上でいいから作るすべはないものか。同規模の出版社の本がいろいろ並んでいて、まとめて買えるようなオンライン書店。みぎわ丸書店が、いずれそういう形になったら嬉しい(野望はたくさんあった方がきっと良い)。