異界往還小説考

異界往還小説考

真銅正宏 著

体裁:A5変形判・コデックス製・カバー・224頁
価格:本体2,400円+税
刊行:2023年9月下旬
ISBN978-4-911029-02-2 C0095

読書行為自体が、現実から異界の往還である――

森鷗外や夏目漱石、谷崎潤一郎ら近代文学の文豪や、戦後に活躍した太宰治、江戸川乱歩、三島由紀夫、そして現在の村上春樹といった作家の、読者を現実から解き放ち、時空も空間も超えた自由な世界へ誘う35作品を紹介。読者がなぜ、「ここではないどこかへ」へと誘う小説に惹かれるのか。そのメカニズムをも解き明かす。

人一人は一生を生きるだけであるが、その周辺の人や物は、その人がたとえ死んでも、続いていくはずである。おそらく、物語における時空の往還には、生が不可逆の一方向と運命づけられている我々人間の、可逆性などへの憧れが反映されているものと考えられるのである。(本書より)

【目次】

はじめに――ハリー・ポッターのロンドン

序 章 異界往還の構造分析に憧れて

第一章 近代における海外
森鷗外「舞姫」/夏目漱石「倫敦塔」/岡本かの子「巴里祭」

第二章 桃源郷の魔力
泉鏡花「高野聖」/森敦「月山」/谷崎潤一郎「少年」/宇野浩二「蔵の中」

第三章 地方・郊外、近代が作った異界
夏目漱石「坊ちゃん」/志賀直哉「城の崎にて」/深沢七郎「みちのくの人形たち」/太宰治「津軽」/大岡昇平「武蔵野夫人」

第四章 時間と空間の歪み
谷崎潤一郎「蘆刈」/坂口安吾「桜の森の満開の下」/村上春樹「世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド」/江戸川乱歩「押絵と旅する男」
 
コラム 帰ってこなかった男――安部公房「砂の女」

第五章 性のラビリンス
川端康成「雪国」/永井荷風「濹東綺譚」/川端康成「眠れる美女」/宮本輝「泥の河」

第六章 内なる異界としての幻覚・夢・病気
萩原朔太郎「猫町」/宮澤賢治「銀河鉄道の夜」/夏目漱石「夢十夜」/内田百閒「冥途」/芥川龍之介「河童」/武田泰淳「富士」/安岡章太郎「海辺の光景」

第七章 伝奇の中の異界
国枝史郎「神州纐纈城」/澁澤龍彦「六道の辻」/石川淳「六道遊行」

第八章 異界からの来訪者
三島由紀夫「美しい星」/唐十郎「安寿子の靴」/色川武大『怪しい来客簿』より「空襲のあと」「墓」/田中小実昌「ポロポロ」

終 章 物語の構成原理としての異界往還と、近代におけるリアリティーの確保

あとがき

【著者プロフィール】
真銅正宏 (シンドウ マサヒロ) (著)
1962年、大阪府生まれ。神戸大学大学院単位所得退学。徳島大学総合科学部助教授、同志社大学文学部教授を経て、現在、追手門学院大学教授。専攻は日本近現代文学。2016年、博士(文学)(神戸大学)。主な著作に『永井荷風・音楽の流れる空間』(世界思想社)、『ベストセラーのゆくえ 明治大正の流行小説』(翰林書房)、『食通小説の記号学』(双文社出版)、『偶然の日本文学 小説の面白さの復権』、『触感の文学史 感じる読書の悦しみかた』(勉誠出版)『匂いと香りの文学誌』(春陽堂書店)などがある。

【ジャンル】文芸、ブックガイド、文芸評論

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