長濱清蔵のアイヌ語 十勝地方の物語

長濱清蔵のアイヌ語

十勝地方の物語

湘南アイヌ語研究会 編
藤田 護・瀧口夕美・中川 裕 著

体裁:A5判・並製・カバー装・192頁
価格:本体2,500円+税
刊行:2025年2月28日
ISBN978-4-911029-16-9 C0087


1970年に録音された、道東・十勝地方のアイヌの音声資料をひもとく――
家族の手元で大切に保管されてきた貴重な資料から、アイヌ語十勝方言と、口承文芸として伝えられた物語、伝承を再現する。散文説話「キムンカムイの話」、英雄叙事詩「オタストゥンクㇽ兄弟とスット村の兄弟との戦い」、言い伝えである「足が速く一日で十勝国境を往復した者の話」のアイヌ語テキストと和訳を掲載。文法解説、語彙集も付し、十勝のアイヌ語の資料としてアイヌ語の学習者や研究者の利用に供する。

十勝を含めた道東のアイヌ語は公開されている資料も少なく、それぞれの地域の出身者が自らのアイヌ語を学ぼうと思ったときに、まだまだそれが簡単ではない状況にある。一般に広くアクセスできる資料を積み重ね、その言語的特徴を明らかにしていくなかで、少しでも今の人々が学びやすくなり、そして後の子どもたちが言葉を継承しやすくなるような土台を整えたい。本書の刊行が、そのような目標に向けた一助となることを願う。(本書「はじめに」より)

【目次】

はじめに/藤田護
長濱清蔵という人/瀧口夕美
アイヌ語十勝方言と長濱清蔵氏の音声資料/中川裕

散文説話 キムンカムイの話(前半)
散文説話 キムンカムイの話(後半)
英雄叙事詩 オタストゥンクㇽ兄弟とスット村の兄弟との戦い
言い伝え 足が速く一日で十勝国境を往復した者の話

長濱清蔵氏の語りのアイヌ語文法/藤田護
長濱清蔵氏の語る物語の特徴/藤田護
長濱清蔵テキスト語彙一覧

【著者略歴】
藤田護(ふじた・まもる)
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス環境情報学部専任講師、ボリビア・ラパス市のアンデス・オーラルヒストリー工房(Taller de Historia Oral Andina)外部協力メンバー。アイヌ語・アイヌ語口承文芸研究、ラテンアメリカ地域研究、スペイン語教育などを専門とする。主な業績に、「津島佑子『「私」』におけるアイヌ神謡――触発され口承文学化する「私」の揺らぎと広がり」(『言語態』第19号、2025年)、「金成マツ筆録ノートのアイヌ語口承文学テクストの原文対訳及び解釈――金田一京助宛ノート散文説話「雪狐のカムイ(upas cironnup kamuy)」」(「千葉大学ユーラシア言語文化論集」第26号、2024年)、「南米アンデス高地における先住民言語と口承文芸のいまと未来」(『口承文芸研究』第46号、2023年)、「口承の物語に現れる人間と動物の関係を読み直す――南米アンデス高地のアイマラ語と北東アジアのアイヌ語の物語テクストから」(宮代康丈、山本薫編『言語文化とコミュニケーション(シリーズ総合政策学をひらく)』慶應義塾大学出版会、2023年)などがある。

瀧口夕美(たきぐち・ゆみ)
1971年北海道釧路市生まれ。編集グループSURE代表。著書に、『民族衣装を着なかったアイヌ』(2013年)、『安心貧乏生活』(2015年)、『子どもとまなぶアイヌ語』(監修・中川裕、2021年)、『生きる場所をどうつくるか』(黒川創との共著、2024年、上記はいずれも編集グループSURE)、『ミンタㇻ③アイヌ民族33のニュース』(北原モコットゥナㇱとの共著、2024年、北海道新聞社)、『アイヌ語を話してみよう! 先住民族アイヌを学ぶⅢ』(大澤香、石川康宏との共著、2024年、日本機関紙出版センター)がある。

中川裕(なかがわ・ひろし)
1955年神奈川県生。千葉大学名誉教授。東京大学文学部言語学科卒。1995年金田一京助博士記念賞受賞。2018年文化庁創立50周年記念表彰。1985年から2021年まで千葉大学文学部でアイヌ語・アイヌ文学を中心に講義を行う。著書に、『アイヌ語千歳方言辞典』(草風館、1995年)、『アイヌの物語世界』(平凡社ライブラリー、1997年)、『カムイユカㇻでアイヌ語を学ぶ』(中本ムツ子と共著、白水社、2007年)、『語り合うことばの力』(岩波書店、2010年)、『アイヌ文化で読み解く「ゴールデンカムイ」』(集英社新書、2019年)、『ニューエクスプレスプラス アイヌ語』(白水社、2020年)、『ゴールデンカムイ 絵から学ぶアイヌ文化』(集英社新書、2024年)、『アイヌ語広文典』(白水社、2024年)などがある。

【ジャンル】人文書/歴史・民俗・言語学

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