「佐和山落城記」を読む

「佐和山落城記」を読む

石田三成の重臣・山田家に残された古文書の謎

田村哲三 著

体裁:A5判・並製・カバー装・144頁
価格:本体2,000円+税
刊行:2025年11月
ISBN978-4-911029-25-1 C0021

千葉県流山市に残された古文書から、関ケ原の敗者の末裔が記した歴史を読み解く――

慶長5年(1600)、「天下分け目」となった関ケ原の戦いで徳川家康に破れた石田三成。勝利した東軍は、佐和山城を落城し、その後、城主・石田三成は斬首された。
「佐和山落城記」は、石田三成の重臣であり忠臣であった山田上野之助の子孫が書き残した、佐和山の落城を描いた古文書である。ここには、落城に至る経緯から、山田上野之助の息子・隼人がどのように佐和山城から逃れたのかまで、詳しく描かれている。昭和10年(1935)、千葉県流山市東深井の古い蔵の中から発見され、当時の新聞でも大きく取り上げられる。その後、東京大学史料編纂所で調査研究もなされた。
勝者である徳川が残した、栄華を誇示する歴史ではなく、表舞台から姿を消した敗者による貴重な文書の現代語訳と影印を掲載。資料発見に至る経緯などを仔細にまとめた解説も付す。

二〇二五年は関ヶ原合戦、佐和山落城から四二五年、大坂落城から四一〇年、古文書が発見されてから九〇年の節目の年に当たる。この節目は山田家の祖で、石田三成の重臣であり忠臣であった山田上野之助の没後四二五年、山田隼人の没後四一〇年でもある。このように節目の年が重なるのにも何かの縁を感じた。また、山田家の祖から古文書「佐和山落城記」を世に出すことを託されたようにも思えた。このような縁や思いを形にするのも郷土史にかかわる者の役目ではないか。
この度、山田家のお許しを戴いて本書を出版することになった。流山に佐和山合戦や大坂の陣にかかわった武士がいたことや、石田三成の重臣の末裔が四〇〇年もの永い間、現在の千葉県流山市、東深井に移り住んでいたこと自体が歴史のロマンである。佐和山落城のようすや石田三成の捕縛、歴史の転換期の背景など、敗者が書いた古文書を通して身近に感じていただければ幸いである。(本書「まえがき」より)

【目次】

  まえがき
  「佐和山落城記」刊行にあたって 山田恵美子
  石田三成の再評価のために 石田三成家第一五代当主 石田秀雄
  佐和山落城の歴史に触れる 大谷吉嗣家第一六代当主 大谷幹伸

Ⅰ 「佐和山落城記」とは何か
  古文書の発見
  史料編纂所からの手紙
Ⅱ 佐和山落城記[現代語訳]
Ⅲ 「佐和山落城記」を読む
  石田三成について
  佐和山落城記の疑問と謎
  山田上野之助はどんな人物か
  大谷吉継の子孫――なぜ東松山市に移り住んだのか
  山田家の氏寺・慈眼院
Ⅳ 佐和山落城記[影印]
  「佐和山落城記」年表
  あとがき
  参考資料

【著者略歴】
田村哲三(たむら・てつぞう)
1938年茨城県つくば市生まれ。1957年誠文堂新光社入社、主に営業、広告宣伝、マーケティング部門を担当。誠文堂新光社、博文館新社、法学書院で営業代表歴任。現在「NPO法人流山史跡ガイドの会」理事長。
主な著作に、『出版王国の光と影―博文館興亡六十年』(法学書院、2007年)、『利根運河を完成させた男―2代目社長志摩万次郎伝』(崙書房、2012年)、実録風小説『カナル』(2016年)など。最新刊は『流山の史跡をあるく』(図書出版みぎわ、2024年)。

【ジャンル】人文書/歴史、中世史、地域史