世界を文学でどう描けるか

世界を文学でどう描けるか

黒川創 著

体裁:四六判・上製・カバー装・192頁
価格:本体2,400円+税
刊行:2023年2月下旬
ISBN978-4-911029-00-8 C0095

いま、ここにある「世界」とは、何か
また、どのようにすれば、それを叙述できるのか――


2022年春にロシア軍のウクライナ侵攻が始まったとき、思い起こしたのは20年前に訪れたサハリンで出会った人びととの会話だった。アイヌ、ニヴヒ、ウイルタといった北方先住民族たちと、日本人、中国人、朝鮮人、ロシア人などが時代の流れのなかで移り住み、ともに暮らすサハリンで、自らをエミグレ(亡命者/流亡者)といった一人の女性。作家は、サハリンに生きた人びとの姿を通して、この世界をどうすれば描くことができるかという自問と対峙する。
いまなお続く「終わらない戦争」の時代下で、戦火から逃れ、流浪を余儀なくされる人びとがいる。世界の複雑さを直視し、そこに住むひとりひとりの生活を見つめること、想像すること。そこから、かすかではあるが、小さな光明としての、言葉が、文学がたち現れる。

戦争は、いまも世界のいたるところで始められる。だが、超大国でさえ、この戦争を終わらせる力を失った。いや、むしろ、終わらせる理由さえ見失った、と言うべきか。アフガニスタンでも、イラクでも、シリアでも、また、おそらくはウクライナでも。(本書より)

【目次】
1 私がサハリンに行ったとき
2 ユジノサハリンスク
3 ポロナイスク
4 オハ
5 二〇年後の世界
6 『フランケンシュタイン』は、世界をどう描いたか
7 ヴィノクロフのこと
8 オタスからの世界

【著者紹介】
黒川創(くろかわ・そう)
作家。1961年京都市生まれ。同志社大学文学部卒業。1999年、初の小説『若冲の目』刊行。2008年『かもめの日』で読売文学賞、13年刊『国境[完全版]』で伊藤整文学賞(評論部門)、14年刊『京都』で毎日出版文化賞、18年刊『鶴見俊輔伝』で大佛次郎賞を受賞。主な小説に、『もどろき』『暗殺者たち』『岩場の上から』『暗い林を抜けて』『ウィーン近郊』『旅する少年』など。最新刊に『彼女のことを知っている』がある。

【ジャンル】文芸書/人文書、回想記